更年期の症状で多くの方がとても不快に感じるホットフラッシュやほてり。これは体が熱くなって、その熱さのせいで大量に汗をかきます。暑い季節だと、気温のせいと勘違いしてわかりづらいのですが、冬の寒い時期や寝る直前など暑くもないのにこの症状が出るのです。
さくらママも最初は気温が高いせい?体調がよくないから?こんなに体が熱くなって汗をかくのか思っていました。
そして、だんだん頻度が多くなってくる。そして、暑くもないのに流れるような汗をかくこと増えてくるとその不快指数はマックスに達します。多くの女性はこの状態でも我慢をして過ごします。
それは、これが更年期の症状だとは思っていないから。さくらママも同じように思っていた一人ですが、暑くもないのに汗をかいたりすることが増え、だんだん不安を感じるようになりました。
いろいろ調べて更年期症状にあてはまることを確認したので、病院に行くことにしました。婦人科に行って現状を相談すると「女性ホルモン補充療法(HRT)」をすすめられました。
「女性ホルモン補充療法(HRT)」とはどんな治療でどんな効果あるのか?
この治療法はまだまだ一般には広がっていないので知らない方も多いようです。
この記事ではさくらママの実体験を交え「女性ホルモン補充療法」がどんなものなのかを紹介をしていきます。下記の方を対象とした記事となっています。
・更年期障害の対策を知りたい方
・ホットフラッシュの治療をお考えの方
・顔や体のほてりで悩んでいる方
・女性ホルモン補充療法(HRT)をしようかどうか迷っている方
更年期の判定はどんなものなのか?
女性ホルモン補充療法とはどんな治療法なのか?
効果と副作用は?費用は?
など体験していることを紹介します。
女性ホルモン補充療法とは?
ホルモン補充療法(HRT)とはエストロゲンを補う治療法です。更年期障害を改善し、ほてり、のぼせなどの症状に大変高い効果を示します。
この治療は希望するすべての方が受けられるわけでないありません。様々な検査を行いこの治療を行えるかどうかを確認して最終的に決定されます。
閉経など身体の状態を検査する
エストロゲンの現状を確認する血液検査
まず、婦人科に行って現状の症状を相談後、血液検査をして身体のエストロゲンの現状を確認します。病院によってホルモン検査をするところもあるようです。血液検査の結果で更年期の判定をします。
下記はさくらママの血液検査結果で更年期の判定に関する部分のみ抜粋しました。
項目名 | 結果 | 基準値 |
FSH 前 | 74.6mlU/ml | 卵包期:3.0~14.7、 排卵期:3.2~16.6、 黄体期:1.5~8.5、閉経後157.8(mlU/mL) |
エストラジオールー血清 | 10.0以下pg/mL | 卵包期:19.0~226.0、 排卵期:49~487、 黄体期:78~252、閉経後39以下(pg/mL) |
FSHは卵胞刺激ホルモンです。「成熟卵をつくりなさい」という命令を出しているホルモンで、脳にある下垂体から分泌されています。 エストラジオールはエストロゲンです。「子宮内膜を厚くして、妊娠に備えなさい」という命令を出しているホルモンで卵巣機能の状態を知るための重要な項目です。
血液検査結果、さくらママの身体ではエストロゲンはほぼ生産されていないことが判明しました。
更年期指数(SMI)チェック
血液検査だけでなくこのBionウインでは更年期指数(SMI)チェックの問診等を行い、2つの結果に基づき現状を医師が判断します。
さくらママの結果は閉経間近と診断されました。わかっていましたが、数値を見ると「歳をとった事実を目の当たりにした」と落ち込みます。ホットフラッシュやほてりなどはすべて更年期症からおきている確定したということです。
更年期症の治療法には3つの選択肢があります
更年期障害の治療法には主に3つあります。それぞれに、メリット、デメリットがあります。
1.ホルモン補充療法(HRT)
2.漢方による治療
3.抗不安薬、抗うつ薬による治療(心理療法・カウンセリング含む)
1.ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法は、ホットフラッシュ、ほてりや発汗などの更年期症状を改善する他にも、骨折の予防や脂質代謝の改善、さらに腟のい縮症状の軽減が効果があります。また、更年期のうつ症状を軽くし、皮膚のシワを減らすといった作用もあります。
ホルモン補充療法メリット
・ホットフラッシュや不眠など、更年期障害のさまざまな症状の改善
・骨粗鬆症の予防
・高脂血の予防
・大腸がんのリスクが少なくなる
・肌のハリ、粘膜の潤いが得られる
どれくらいの効果が期待できるのかを実際のデータから見てみましょう。ほてりには、「のぼせ」や「冷え」も入ります。消失率は100%近い数字ですね。更年期に悩やまされる主な症状は改善される可能性が高いようなのです。
ホルモン補充療法のデメリット
ホルモン補充療法の治療を始めると1~2ヶ月間は、胃のむかつき、胸の張りやおりものの増加などの違和感を感じることがあります。からだが治療に慣れてくれば治まるものがほとんどのようです。
・子宮出血
・長期間うけると乳がんのリスクが高まる
・長期間うけると脳卒中の危険が高くなる
・長期間うけると配塞栓や心筋梗塞のリスクが高まる
乳がんのリスク
①乳がんリスクに及ぼすホルモン補充療法(HRT)の影響は小さいです。
②乳がんリスクは主としてエストロゲンと一緒に併用される黄体ホルモンの種類と、ホルモン補充療法の治療期間に関連していると考えられます。
③乳がんリスクはホルモン補充療法を中止すると低下します
【子宮がある人の場合】
- ホルモン補充療法の治療期間が長くなると、浸潤性(しんじゅんせい)乳がん※リスクは高くなりますが、5年未満の治療期間の場合はリスクは高くならない。
- ホルモン補充療法を5年以上治療した場合のリスク上昇は、生活習慣によるリスク上昇と同じくらいかそれ以下。
- ホルモン補充療法では使う薬剤、とくに黄体ホルモンの種類によってリスクは異なります。
※浸潤がんとは、がんが乳管や小葉の中にとどまらず、近傍の組織に入り込んだり、血管やリンパ管から全身に移行するタイプのものです。
【子宮がない人の場合】
- ホルモン補充療法の治療期間を延長すると、浸潤性(しんじゅんせい)乳がんリスクは高くなりますが、7年未満の治療期間の場合はリスクは高くならない。
- 10年以上の治療した場合のリスク上昇は、生活習慣によるリスク上昇と同じくらいかそれ以下。
現在、国際閉経学会など国際的な専門機関の一致した見解は、次のようになっています。閉経後早期から行うHRTはリスクよりも利益/利点が上回っている。また、「何年間までなら投与してよい」というように、期限をつける理由は見当たらない。
出典元:NPO法人女性の健康とメノポーズ協会「HRT(ホルモン補充療法)」
・頸動脈疾患リスク
①閉経後早期(おおむね2年以内)に行われるホルモン補充療法では、心筋梗塞は増加しない。
②経口HRT(ホルモン補充を飲んで行う治療)の場合、心筋梗塞リスクは年齢とともに上昇します。
③高齢の女性、虚血系心疾患(心筋梗塞・狭心症など)の女性に対しての経口HRTは心筋梗塞の発症リスクを増加させます。
開始したHRTでは、内服薬で静脈血栓塞栓症や脳梗塞がごくまれに発生するが、皮膚から吸収するエストロゲン製剤(貼り薬など)では増加しないという研究報告が多く出ています。出典元:NPO法人女性の健康とメノポーズ協会「HRT(ホルモン補充療法)」
・脳卒中のリスク
①ホルモン補充療法は虚血性脳卒中(脳梗塞)のリスクは増加させるが、出血性脳卒中(くも膜下出血・脳内出血)のリスクは増加させない。
②閉経後早期(おおむね2年以内)に行われるホルモン補充療法では、虚血性脳卒中の発症リスクは少ない。
③経口低用量HRTと張るタイプのHRTは虚血性脳卒中を増加させない可能性があります。
④ホルモン補充療法による脳卒中のリスク増加は、治療をやめればなくなります。
ホルモン補充療法の3つの投与方法
ホルモン補充療法は子宮のある人と子宮のない人、閉経後すぐの人と何年もたつ人など、その人の状態によって薬の使用方法が変わります。
①のから始めて②に切り替えていくことが望ましいです。また①②③の投与法とも、月のうち1週間くらいの休薬期間を入れることもあります。
また、日本では、飲み薬、貼り薬や塗り薬(ジェル)が医師の処方する薬として使用されていて、健康保険が適用されています。
どの方法で投与するかは選べますが、投与方法でリスクの違いなどもあるので、十分医師から話を聞いて選ぶのがいいと思います。
さくらママは子宮があるため①の周期的投与法の変形版で始めることにしました。
11日間「エストラーナ」2日おきに張り薬を張りかえて、黄体ホルモンの飲み薬を飲む周期です。
ホルモン補充療法が受けられない人
ホルモン補充療法を行うことができないのは、乳がん、子宮がん、血栓症の治療薬を処方されている、または脳卒中、心筋梗塞を起こしたことのある人、肝機能が悪化している人などです。
なお、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)、高血圧、肝機能障害がある方には、投与方法や投与量を工夫しながら治療は行われます。さくらママも子宮筋腫で手術をしましたが、子宮をとってないので筋腫が大きくならないかなど注意深く見守っていく必要があると言われています。
ホルモン補充療法治療中に実施したい検査
ホルモン補充療法を行うことでリスクが増加する病気もあるので、治療中は定期的に検査をすすめられました。
【診察の時】
・症状や出血の状態について・血圧
【半年に1回】
・肝機能や血中コレステロールなどの生化学検査・乳がん検診・内診 など
【1年に1回】
・一般的な血液検査
・骨りょう測定・子宮体がん検査
・甲状腺検査・子宮頸がん検査
・胸部X線検査・便せん血反応(大腸がん検査)
・心電図検査・血糖値の検査 など
・ホルモン補充療法の費用
治療で使われるエストロゲンや黄体ホルモンの薬剤は健康保険が適用されます。
なので周期的投与方法の場合、1ケ月健康保険3割負担で1,500円くらいです。(病院によって製薬会社が違いますからお薬も違います)
ただ、ホルモン補充療法治療中はプラークがたまりやすくなることや乳がんリスクがあるので定期的に検査を受けます。頸動脈エコーやたい癌、けいがん検診、マンモグラフィ―、血液検査など、その金額によっては年間で数万円くらいかかります。
2.漢方による更年期の治療
ホルモン補充療法を受けられない方や更年期症ではないけれど、体が疲れやすい、イライラ感じる方には漢方による治療法もあります。
漢方では、「気・血・水(き・けつ・すい)」という漢方独特の考え方から体の不調を探っていきます。更年期のさまざまな症状は、気・血・水のうちの、「気」や「血」の不調から来ていると考えられています。
・頭痛や肩こりは血の流れがとどこおる「お血(おけつ)」
・めまい、気力の低下、睡眠障害や耳鳴りなどは血が不足する「血虚(けっきょ)」
・のぼせやほてり、頭痛、動悸などは気の流れに異常が生じる「気逆(きぎゃく)」
このようにとらえられ、これらを改善する漢方薬が処方されます。
女性の更年期症状に用いられる漢方薬
(かみしょうようさん) | 加味逍遙散体力があまりない、のぼせ感があり、肩がこり、精神不安やイライラのあるなどの更年期障害、不眠症など |
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(うんけいとう) | 温経湯体力があまりない、手や足がほてり、唇がかわくなどの更年期障害、不眠など |
(ごしゃくさん) | 五積散体力があまりなくやや虚弱。冷えがあるなどの更年期障害、頭痛など |
(けいしぶくりょうがん) | 桂枝茯苓丸比較的体力があり、頭痛、肩こり、めまい、のぼせ、足冷えなどの更年期障害、肩こりなど |
(うんせいいん) | 温清飲体力があまりない、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるなどの更年期障害、神経症など |
(とうきしゃくやくさん) | 当帰薬散体力なくて、冷え症で貧血症。疲労しやすいなどの更年期障害、むくみ、冷え症など |
漢方も飲み方によっては体調を悪化させたりすることがありますので、不調を感じたら医師や薬剤師などに現状を相談されるのをおすすめします。
3.不安薬、抗うつ薬による更年期の治療
抑うつ気分は更年期に経験する症状の1つですが、気分の落ち込み、不安感や焦燥感が強い場合は、抗不安薬・抗うつ薬などの向精神薬も有効です。服用には医師の診断が必要ですので、症状がひどい場合は婦人科で医師に相談しましょう。
更年期の治療を始めるタイミング
更年期の症状は不快なものが多いのですが、病院に行くほどでもないとそのまま我慢をしてしまいがちです。でも今はいい治療法があります。
ホルモン補充療法は、自然の流れに逆らうように思われ、抵抗のある方も多いかもしれません。でも、崖から落ちていくような急激なホルモンの変化に対して、クッションを差し出してゆるやかに着地させていくようにイメージすると治療本来の意味がわかりやすくなります。そのため、更年期障害の症状が出たかな?という不調を感じたら、まずは婦人科へ相談にいきましょう。
ちなみに、欧米や北欧を中心に世界の先進国で更年期世代からの女性に処方されているそうです。日本では残念ながらまだあまり普及していていないようです。
まとめ
ホルモン補充療法(HRT)を中心に紹介しました。
まずは
閉経したのかなど身体の状態を検査する
自分の身体の状態を知り適切な治療法を探しましょう。
・更年期症の治療法は主に3つの選択肢
1.ホルモン補充療法
多数のメリットがあり、デメリットもあるのでよく考えて決めましょう
2 . ホルモン補充療法の3つの投与方法
周期的投与法、持続併用投与法、エストロゲン単独投与法があります。
3 . 薬剤は、飲み薬、貼り薬(貼付剤)、塗り薬(ジェル)があります
ホルモン補充療法が受けられない人がいるので要注意。
ホルモン補充療法の費用は保険がきくのでそれなりの費用でできます。
・ホルモン補充治療ができない方は漢方による治療もあります
・うつなどが主な症状の場合には、心理療法による抗不安薬、抗うつ薬による治療などもあります。
さくらママはホルモン補充療法を受けることにしましたが、すぐには治療に入れないのです。
まずは治療がうけられるかどうかを確認するために、血液検査、乳がん検査(マンモグラフィ検査)、子宮頸がん、子宮体癌検査をして、さらに頸動脈エコーを確認して問題がなければ、いよいよ治療スタートとなります。思ったより先は長いのです。
この記事は2018年12月に行われた「こし産婦人科の更年期についての講座」で学んだ内容を基に書いています。
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